教育心理学研究
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C.A.S.の日本標準化について
対馬 ゆき子
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1963 年 11 巻 2 号 p. 86-97,126

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抄録

本研究の目的はCattellおよびScheier共著1. P. A. TAnxietyScaleQuestionnaireの日本における標準化版作成である。その方法として次のような手続きを行なつた。
1. 内的整合性: 項目を訳出し, 男子高校生255名および大学生340名に施行し, 回答率および項目総得点間の相関を算出した (Table1, 2)。負の相関を示す項目のうち2項目を修正し, 他の1項目をSixteenPersonalityFactorQuestionnaire の同因子の項目と入れかえた。その結果, すべての項目が総得点と正の相関を有するようになつた。大学生における相関の平均は,. 37である。
2. 因子分析: テストを300名の女子大学生に施行し項目間の四分相関係数を求めた (Table3)。相関表を Thurstoneのセソトロイド法で因子分析を行ない, いちおう6因子を求めた (Table4)。この6因子を直交軸回転を行つたところ, 多少のずれがあり独立性が低いが, Cattellの5因子に内容の近いものをみとめることができた。Cattellの1次因子とのちがいは, Catte11の1次因子はSixteenPersonalityFactorQuestionnaire にもとずいているのに対し, 本分析においてはAnxiety Scaleという同質的な少数の項目の集まりから出発しているという方法のちがいに問題があるのではないかと思われる。
本分析における因子に基づき5つの下位尺度を構成した。これを300名の男子大学生に施行し, 各下位尺度間のピアソン相関係数を求め, 因子分析を行なつた (Table6)。その結果, 本テストは高次のレベルにおいてはほとんど1因子からなることが発見された。これは原テストの構造と一致するものであると考えられる。これらの結果から本テストは日本においても, 米国におけるとほぼ同様な構造を有するといいうるであろう。
3. 実際的妥当性: 本テストをノイローゼ患者167名不安ノイローゼ62名, 精神病患者107名に施行し, 正常人集団との差を求めた。正常人とノイローゼ, および正常人と不安ノイローゼ患者の間には, 不安および各因子得点において1%レベルで有意差が見られた。特に不安ノイローゼとの間の差は大きく, このことは本テストの妥当性を示すものと考えられる。さらに4つの臨床例における得点の変化を検討したところ, その変化が臨床的所見と照合することが発見された。
4. 標準化: テストを4229名の高校生, 1864名の大学生男女に施行した。男女間に一貫して差が見られたが, 地域差, 学年差などは見られなかつた。得点の分布, 平均, 標準偏差を求め, 高校大学, 男女別の換算表を作成した。(Table7, 8a, 8b. 9)

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