教育心理学研究
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実際運動視の発達に関する研究: I
図形の差異性について
今泉 信人
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1963 年 11 巻 2 号 p. 98-104,127

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抄録

本研究は, 相貌的知覚の観点から, 図形のもつ意味的性質と図形の提示される方向とを変量として見えの速さを発達的に検討したものである。
実験1. Fig. 1に示す3つの図形 ((1) 三角形,(2) 手,(3) 月ロケット) をそれぞれ, その指向する運動方向 (下から上へ) に一致する方向 (順方向) と一致しない方向 (逆方向) の2様に運動するようにする。これら計6個の図形の見えの速さを小学校1年生と大学生の2群について比較した。その結果, 次の事実が明らかになつた。小1年生では,(1順方向の図形についてみると, 見えの速さは月ロケット・手・三角形の順序に速い。(2) 逆方向の図形についても同様に, 見えの速さは月ロケット・手・三角形の順序に速い。(3) いずれの図形も, 順方向の方が逆方向よりも速く動いていると知覚される。しかし, 大学生の場合には,(4) 図形間に明確な見えの速さの差がほとんど見出されない。
実験II. 面積と輪廓はまつたく等しいが, 輪廓内部の図柄が異なるようなFig, 3に示す3つの図形 ((イ) 順鳥・回逆鳥・ (ハ) 花) を作つた。このようにして図柄の要因を比較的統制したうえで, 図形の意味的性質とその提示方向による見えの速さのちがいを再検討した。その結果, 次の事実が明らかにされた。(1) 小1年生では, 見えの速さは1頂鳥・逆鳥・花の順序に速い。(2) 大学生では, 3つの図形の見えの速さはまつたく等しい。

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