教育心理学研究
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精神薄弱児の行動分析と学習指導への適用
山内 郁岡本 夏木
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1964 年 12 巻 2 号 p. 85-91,126

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抄録

本研究は, 精神薄弱児についてのあらわな行動 (overt behavior) を基にして, 種々の特色を明らかにし, その結果を学習指導上に役立てる方法について考察した。被験者は, 15名で, 特殊学級に在籍しており, CAは 9~12, MAは5:5~8:0, IQは50~77の範囲の児童である。
(1) まずこれからの児童のovert behaviorをもとにして, 大きく3つのタイプに分類する。すなわち, タイプAは情緒的な障害は特になく, 単に知的に劣っている者, タイプBは興奮的な者, タイプCは制止的な者である。
(2) 被験者の授業中の態度や教師の刺激に対する反応などの行動を綿密に記録し, 各記録を学習志向的反応と非学習志向的反応に分類した。その結果, この反応傾向は知能との関係よりもむしろ, タイプとの関係が顕著であった。すなわち, タイプAは, 他のタイプのものよりも学習志向的反応が多く, 授業形態にも入りやすかった。非学習的反応を分析したとぎ, Bタイプは他人に衝動的に働きかけ, 学習となんら関係のない反応を他人を介して行なっていた。他方, Cタイプの者は, 他人との関係はなく, びとりで自分の世界の中に入っているような反応が多かった。このようにみたとき, 教師はBタイプには行動を統制するようにし, Cタイプに対しては常に刺激を与え, 行動を促進してやるように働きかけなければならない。
(3) ソシオメトリック・テストを行なった結果、知能よりもタイプが人間関係の成立により多く関与しており Aタイプはクラスのより中心的な位置におり, タイプC は周辺的な位置にいることがわかった。
(4) 以上のような各児童の反応と, タイプと, 知能水準や学習水準とによって, われわれは3つのグループに児童をわけた。できるだけ各グループが同質となるようにした。知的学習 (国語, 社会, 理科, 算数) については, この3グループで指導を行ない, 表現学習 (体育, 図工, 音楽) に関しては, すべての児童をひとつにまとめて指導した。このような方法で指導することにより学習効果を高めるとともに, 他方, この学級を組織づけ就いこうとした。

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© 日本教育心理学会
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