教育心理学研究
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「ストオリイ」による人格測定方法
集団の基準に関して
川村 幹
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1965 年 13 巻 2 号 p. 91-100,126

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抄録

人格をその人の所属する集団の基準にてらして, どのくらい逸脱しているかをみる方法により測定しようとするのが, この研究の測定方法である。問題として物語の筋書をあたえ, 同じ問題に5質問出して, 各質問に対する答として選択肢を選ばせる。選択肢は2群にわける。
1) その集団で50%より有意に大の百分率で選択されている選択肢群以外の選択肢を選択しているものが大である程逸脱しているとする。これが主要な方法である。
2) 各質問に対して選択した選択肢が, その集団の各質問に対して選択された選択肢群の頻数の間の大小関係にそつていないものであることが多い程, 逸脱しているとする。これが副次的方法である。
しかしこの測定方法では, まず
a) その集団が病的であれば, その基準は現代の社会の基準といちじるしく異なるので, その集団では逸脱していることが現代の社会の基準にてらせば, 逸脱していないことになる場合があるという問題がある。これに対しては次の2つの取り扱いがある。
i) 集団の基準としてとられた選択肢群 (50%より有意に大の百分率で選択された選択肢群) が, 多数の集団で同じく基準としてとられた選択肢群と一致するかどうかみる。
ii) 質問による選択肢群選択の変化をみる。また次の問題がある。
b) 基準に強迫的に従う場合もあるから, 基準から逸脱していないからといつて正常であるとはいいがたい。これに対しては正常者を選び出す方法がとられる。強迫的に従う場合は異常固定の場合もあるので, 正常という語を通常の意味よりも狭く, 異常固定の「異常」に対する程度のものを意味すると考え, 集団新・人格診断検査によつて正常者を選び出す方法をとつた。そして逸脱は人格の「好ましさ」を意味するものと考えられるが, 正常者についてこの研究の測定方法の結果と集団新・人格診断検査の結果との相関を求めたところ, 相関があつた。

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© 日本教育心理学会
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