教育心理学研究
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鼻性注意散漫症 (Aprosexia nasalis) を有する慢性副鼻腔炎罹患児の知能検査成績について
五十嵐 斎一
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1965 年 13 巻 3 号 p. 161-165,191

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抄録

医学領域でなされた高等学校生徒を対象にした鼻性注意散漫症 (aprosexia nasalis) の有無による知能の研究結果では, 鼻性注意散漫症を有する罹患児群の知能は低劣であつたと報告されている。このことから慢性副鼻腔炎罹患者の知能低劣の事実は当該疾患自体のみによるというよりは, むしろ鼻性注意散漫症に関係するのではないかとの見解もみられている。
筆者は児童健康診断票に記載されている事実にもとついて, 松本市内の小学校4, 5, 6年児童から調査対象児を選出した。調査年度をふくんで連続2か年度あるいはそれ以上の年度にまたがつて, 未処置の虫歯は別として,(1) 当該疾患以外に, 他の疾患あるいは障害のない者を罹患児とした。該当児は44名 (男23名, 女21名) 。 (2) なんらの疾患あるいは障害のない者を健康対照児とした。該当児として77名 (男39名, 女38名) をとつた。
さらに, 罹患児を鼻性注意散漫症を有する者の群と, そうでない者の群とにわけた。他方, 健康対照児を, 鼻性注意散漫症に類似の状態をもつ者の群と, そうでない者の群とにわけた。そして, かれらの知能検査成績 (知能偏差値) について平均値と知能評価段階ごとの人数比との2つの観点から全体的 (男+女) に検討した。知能検査成績は新制田中B式知能検査第2形式によつて測定した。結果は次のようにまとめられる。筆者がとつた方法のもとでは
1知能検査成績において鼻性注意散漫症を有する罹患群の方が低劣であるということは認められなかつた。
2鼻性注意散漫症が知能検査成績に望ましくない影響をもたらすものでないことが示唆された。

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© 日本教育心理学会
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