教育心理学研究
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幼児の数概念に関する実験的研究-5才児について
飯島 婦佐子
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1965 年 13 巻 4 号 p. 220-233,255

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抄録

目的: 数の大きさと数概念の測定を行なう場合に問題と'なる各項目を変数として, 年令段階別に実態の分析を行なう。数概念が一定の機能段階の序列をたどつて形成されていくという考え方をさらに検討する。
手続き: 使用した数の大きさは, 1・2・3・4・5・6・8・10である。項目は (1) 対象の2つの量の関係,(2) 集合数の命名,(3) 集合数の把握と分配,(4) 数の構成,(5) 加減,(6) 対応,(7) 配置変換,(8) 序数である。これらの項目はさらに細かく分けられている。被験者は, 5: 0才~5: 5才, 5: 6才~5: 11才の2群に分けられる。それぞれの群は男女50名ずつ, 計200名より成る。
結果: (1) 被験者群別には, 全体的に, 年長群が年少群より高い通過率を示す。
(2) 項目別には, 要素も枠組みもパタ一ンも等しい2つの刺激, 要素の大きさのみ異なる2つの刺激, 計数, 加減, 1対1対応でかなり高い通過率を示す。一方, 不規則的パターンを含む2つの刺激数の配置, サークルパターソ, 不規則的パターンの対応, 変換, 序数では低い傾向がある。知覚的レベルで把握できる条件と, 抽象的レベルでの把握の条件と差があると思われる。
(3) 数の大きさの序列も, 項目ごとの序列も, ある程度の尺度化は認められる。
(4) 項目別に検討した場合に, 大きい数と小さい数の分布型にずれがある。
(5) 等刺激加減の分布は必ずしも数の大きさと関連していない。
(6) この年令段階の幼児は数判断を行なう場合に知覚的要因に支配され, 数詞を媒介とした判断が刺激条件によつては不可能になる。
(7) 多少刺激と等刺激では項目および数の大きさによつて反応型が異なる。
(8) 数詞は「保存」の概念が獲得される要因のひとつとしての作用をしない。むしろ, 1対1対応操作の方が, 「保存」の概念と関連するようである。
(9) この年令段階の幼児は, 集合を分節して再構成する機能も2つの集合を合成して包摂関係を把握する機能も十分でない。
今後の問題: 今後の問題としては,
(1) 各種の刺激配置下の反応型の分析
(2) 7, 9, あるいは10以上の数の場合の分析
(3) その他の年令段階との比較
(4) 順序数の成立条件および基数との関連
(5) 配置の異なる刺激条件の場合の等判断が成立する条件分析
(6) 長さ, 面積, 重さなど数以外の “事物の属性” との関係, およびその枠組みの理論構成が考えられる。

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© 日本教育心理学会
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