教育心理学研究
Online ISSN : 2186-3075
Print ISSN : 0021-5015
ISSN-L : 0021-5015
高校物群習における生徒の認知傾向
大村 彰道
著者情報
ジャーナル フリー

1966 年 14 巻 1 号 p. 1-8,60

詳細
抄録

物理に関して4つの認知傾向を仮定した。すなわち事実や術語, 公式の記憶など, 記憶を中心にして物理を学習する傾向 (認知傾向1), 実際面への応用に関心を持つ傾向 (認知傾向2), 批判的態度でいろいろと疑問を発しようとする傾向 (認知傾向3), 物理の基本的原理の理解や物理の構造に関心を示す傾向 (認知傾向4), である。認知の好み (cognitive preference) で測定したこれらの認知傾向の差異が行動の差異と対応がつくかどうかを調べる。
実験Iでは, 認知傾向と学科の興味との対応, 認知傾向と興味型との対応を東京都内の高校31年生155名について調べた。物理や化学を好む者は, その他の学科を好む者に比べて認知傾向1 (記憶) がよわ少なく, 認知傾向3 (疑問) がより大であった。理科型の興味を示す者は, 認知傾向3 (疑問), 認知傾向4 (原理) が比較的多く, 認知傾向1 (記憶) が少なかつた。non-理科型の興味を示す者はちょうどその反対であつた。
実験IIでは, 行動の差異をみる規準として学力型を用い, この学力型と認知の好みのレベルで測定した認知傾向の差異とがどのくらいの強さで対応しているかを調べた。学力型測定のため, 4つの認知傾向にそれぞれ対応する学力テストI, III, III, IVを作成した。
認知傾向と学力型との間には完全な対応はみられなかつたが, 認知傾向1, 4については仮説の方向にそつた結果が得られた。すなわち自分の認知傾向と一致する学力型ではよい成績をあげられるが, 自分の認知傾向と一致しない学力型では良い成績をとれないのである。
物理的事実に関する短文を提示して, それに関連して考えついたことを自由に答えさせる “自由反応テスト” を実施した。学力テストを実施して生徒に反応の仕方を強制するのではなく, 自由反応テストのように自由に反応してよい状況においては, 認知傾向と生徒の実際に示す反応とがはっきり対応することが明らかになつた。

著者関連情報
© 日本教育心理学会
次の記事
feedback
Top