教育心理学研究
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幼児の数概念に関する実験的研究
4才児の分析を中心とした発達段階に関ずる考察
飯島 婦佐子
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1966 年 14 巻 1 号 p. 25-36,58

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抄録

目的: 4才児の数概念の発達について, それぞれの刺激条件と, 数の大きさの2っの側面から分析を試みた。そして5才児の結果とを総合して幼児の数概念の発達段階にっいての序列を構成する。
手続き: 数の大きさは1, 2, 3, 4, 5, 6である。分析条件は (1) 2っの量の多少等判断,(2) 命名,(3) 集合数の把握と分配,(4) 数の構成,(5) 加減,(6) 対応,(7) 1対1対応操作と保存,(8) 序数である。被験者は4: 0才~4: 5才, 4: 6才~4: 11才男女それぞれ50名, 計200名である。被験者の選択基準は田中ビネー式知能検査にようて, I.Q.93~124の範囲とした。
結果:
1) 4才年少群は4才年長群よりも低い通過率を示す。そして4才年少群と4才年長群の蘭に発達的に相違がみられる。
2) 特に4才年少群においては, 刺激の配列によって影響された知覚的反応がみられる。
3) 4才年少群での1対1対応操作の理解は完全ではない。
4) 4才児では「保存」の概念や序数の概念について把握されていない。
5) 4才児の反応傾向は, 数が大きくなるにっれて困難度が増加する。そしてその困難度の序列に抵再現性がある。
6) 4才児の反応傾向として, 大きな数 (5, 6) の項目の困難度の序列に再現性はない。
7) 等刺激と多少刺激による反応の相異はほとんどみられない。
8) 数概念が発達する序列を以下のように考える。
(1) なんらの数的操作も示さない時期: 単純な形態をなす条件下だけで自発的な対応づけができる。そして知覚的な反応を行なう。
(2) 初期の数的操作が成立してくる時期: 事物と言語的ラベルとの1対1対応ができる。加滅の演算操作の理解ができる。1対1対応操作の理解ができる。
(3) 言語的ラベルの成立する時期: 集合数の把握ができる。
(4) 対象の持つ数の次元の抽象が成立する時期: 数が大」きくなっても集合の持つ要素の大きさや配列などの知覚的要因を捨象して, 数の次元の抽象化が成立する。
(5) 高次の数の構造の理解ができる時期: 「保存」の概念や序数の概念が把握できる。今後の問題: 1) 藤永保ほか (1963) のような実験教育的な方法で検討する。
2) 前典子ほか (1964), 森永良子ほか (1964) の数概念) の発達尺度の多次元性との比較考察をする。
3) 配置の異なる刺激条件下の等判断の成立条件の分析を行なう。
4) 1対1対応操作の理解ができる過程を分析する。
5) 順序数と基数の概念の成立過程の分析を熱みる。

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