教育心理学研究
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言語調整機能の発達的検討
随意運動の形成と発達との関係
阿部 千春
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1966 年 14 巻 3 号 p. 139-146,189

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抄録

Luriaは言語が3才から5才の間に, インパルス的機能から意味的機能へ, また, 外言から内言へ発達すると主張している。
本実験の目的は, Luriaの示した発達段階の妥当性を吟味しつつ, 言語の調整機能の発達を検討することである。実験群に対しては, あらかじめ刺激と運動遂行中に伴なわせることばとを結合させる前訓練を行なう。この際グループによつて介入させることばが異なる。被験者の年令は, 3, 4, 5才である。
実験の結果 (2つの吟味実験を含む), 明らかにされたことは, 主に次のことである。
(1) この種の運動は3才から5才の間に著しい発達を示す。これは言語機能の発達の反映と考えられる。
(2) 前訓練は2種の刺激に対する運動をなんらかの分化したかたちで発動させることに効果があつたが, 喚起された運動自体を洗練させることには効果をもつたとはいえない。また, 4つの実験群間には差がなく, この点に関する限りLuriaの仮説は支持されなかつた。
(3) なすべき行動を前もつて被験者自身のことばで定式化することは, 実際の行動を促進させた。
(4) 反応に聴覚的フィードバックを与える条件下での3才児の結果から, 内的な言語の力が等しいときには, 自分の行為をより強く自覚しうるような外的条件が与えられるときに行動の調整は容易になることが示された。

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© 日本教育心理学会
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