教育心理学研究
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系列記憶と課題解決
若井 邦夫
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1968 年 16 巻 1 号 p. 17-25,60

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抄録

1. 本研究はいくつかの異なった材料を用いることによって記憶の発達傾向を調べるとともに系列記憶課題における提示条件, 教示の効果を検討する目的でおこなわれた。
2. 記憶範囲はテスト結果の処理方法によっては Millerのいうように一定の値をとることを示唆する結果が得られたが, 同時にそれは材料の特質, 被験者によるその材料の学習の度合いなどによっていくぶん変動することも示唆された。したがって, 一定材料についての学習結果の水準を限界をつきとめるという方向でとらえるのではなく, その水準に至るまでの学習過程とその水準に到達した後の変化を追求するという発達的観点をもつことが大切であることも考察された。
3. 刺激材料の提示は被験者の予測を容易にする方法でなされた場合に成績を高めることが示された。したがって, 刺激を単に受動的に機械的記憶にうったえて受容するものとして被験者をみるのではなく, むしろ積極的に一定の構えをもって反応する能動的情報処理者とみることが妥当であると結論される。
4. 刺激材料の有意味性と材料り諸側面の関連性を高めることは, それについての記憶と思考操作を容易にする。また, 有意味性, 関連性について被験者の反応を方向づける教示は積極的効果をもつことが示された。

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© 日本教育心理学会
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