教育心理学研究
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対人態度における価値的認知と感情
塗師 斌
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1969 年 17 巻 3 号 p. 144-155

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抄録

対人態度場面における「あばたもえくぼ」的現象が, 従来の態度構造理論や態度変容理論によって説明されるものであり, かつそれに対して非常に示唆的なものを与えているのではないかという観点に立ち, 学級集団構成員をとりあげて, その中で「好き」「嫌い」という感情的関係を有する対象人物に対する属性認知が価値によって大きく規定され, かつ感情的成分と認知的成分とが一貫性を保っている様相を明らかにしようとした。その際, 属性軸と価値軸との平面に四辺形的に表わされる24の対人形容語構造 (Fig. 1) を仮定し, これらの各形容語を対語にして得られるA, B, Cという三種の尺度が, それぞれ価値尺度, 価値と属性の混入尺度, 属性尺度となっているかどうか (仮説1) をPrincipal-Varimax法を用いて数量的に吟味し, その結果仮説1の立証された14構造の尺度を用いて, 被評定者をL群とDL群に分けた場合に,〔(1) 価値尺度AにおいてはL群は価値的に+, DL群は-の評定がなされ, 両群間の平均評定値の差は大きくなり,(2)尺度BとCにおける評定値間の関係は, L群ではBの方がCより高く, DL群ではその逆になり,(3) A, B, C間の評定パターンが, L群ではA B C, DL群ではA B Cとなる〕(仮説3) かどうかを検証した。その結果, 全般的に仮説3は立証されたが, ただ (3) のL群については, 属性の手がかりが評定をより価値的にしB A Cという仮説とは異った結果が得られた。
なお形容語ハとニを対語にして得られる尺度DがAと対応関係をもつ価値尺度である (仮説2) かどうかも検討されたがその結果は仮説を立証するものであった。討論のところでは, こうした三種の尺度設定とOsgoodらのSemantic Differential Scale, EdwardsのSocial Desirabilityとの関連および対人属性認知の基本的次元についての考察がなされた。

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© 日本教育心理学会
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