1971 年 19 巻 2 号 p. 85-97
われわれは, YG性格検査に用いられた120個の項目を用いて, より洗練された測定尺度を作製しようと試みた。手続きは次の通りであった。
(1) 反応に偏りのある項目を除き, 66項目について改めてセントロイド法による因子分析を行なった。結果は120項目全部について分析した場合とほぼ同様であった。そのため, これを利用しての項目の群化は行なえなかった。
(2) 66項目相互の相関係数を用いて, その値が概ね±. 200以上であり, かつ, 4項目以上できるだけ多数の項目を含むような組合せをすべて抽出した (58組)。
(3) すべての組合せにつき, 主軸法による因子分析を行ない, 第1因子の寄与率を求めた。
(4) 各組合せに含まれる項目の重複をチェックし, 結局5個の尺度を選択した (第1因子の寄与率は56%まで引下げなければならなかった)。
(5) 5個の新尺度による得点分布および尺度得点相互の相関係数を求めた。
(6) 結局, 新尺度は2群に分けるのが妥当であると考えられた。
(7) しかし, すべての新尺度を構成する項目は, 旧尺度の異なる数個の尺度の構成項目であり, 新尺度が測定する内容を明確にすることはできなかった。それは, 各項目の意味内容について, 作製者の判断と被検者の判断とが異なることを示すものだからである。
これに対して, 新しい性格診断の方法がデモンストレートされた。それは, 相互に独立 (無相関) な4個の項目への反応パターンを解釈するものである。
81個のパターンのうち, 600名の被検者中に見出されなかったパターンは1個であった。
もっとも多数の被検者が含まれるパターン2個について,
(1) それぞれのパターンに属する被検者の3/4が一致した反応をしている項目が, 他のすべての項目の中から抽出され,
(2) 4個の主項目とこの抽出された補助項目とについて, 相互の意味的関連が検討され,
(3) 2個のパターンが比較された。
それによって, 豊富な情報が反応の意味内容に沿ってえられることが示された。
これらの事実に基づき, 測定尺度の根本仮定が否定されることが討論された。