教育心理学研究
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精神薄弱児の動機づけに関する研究
硬さに関する動機づけ理論の検討
加藤 義男
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1971 年 19 巻 3 号 p. 129-138

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抄録

本研究は, 社会的遮断にもとつく動機づけの差異から硬さ行動を説明していこうとする硬さに関する動機づけ理論についての実証的な検討を行なうことを目的として実施された。
そこにおいて, 次の2つの仮説がたてられた。(仮説 1) 精薄児に対する社会的強化条件は, 無強化条件に比べてより高い遂行をもたらすであろう。(仮説2) 社会的遮断をより強くうけてきている精薄児 (高遮断群) は, 比較的それをうけてきていない精薄児 (低遮断群) に比べて, おとなとの接触やおとなからの支持や承認に対するより強い動機づけを持っており, そのためにより大きな硬さ行動を示すであろう。
被験者として, 比較的社会的遮断の状況にあると判断された精薄児収容施設A学園に在園する施設収容精薄児 18名と, 2つの中学校の特殊学級に在籍する家庭在住精薄児25名を対象とした。そして, 実験者による効果について検討するために, 性差と被験者に対する親密さの違いという2つの変数を導入し, 2名の実験者によって実験が行なわれた。実験は, 単純な飽和課題であるマーブル入れゲームが行なわれ, 社会的強化条件と無強化条件のもとで実施された。
その結果,(1) 社会的強化群の方が無強化群に比べて, より長い遂行時間を示し, さらに遂行量におけるより大きな増加の割合を示し, こうした結果から (仮説1) はほぼ検証されたといえる。(2) 高遮断群としての施設収容精薄児の方が, 低遮断群としての家庭在住精薄児に比べて, 有意に長い遂行時間を示し, 許された最大限の時間の遂行をした者の割合が有意に大きく, さらに遂行量の増加の割合における社会的強化群と無強化群の間の差異がより大きいということが示され, こうした結果から (仮説2) もほぼ検証されたといえる。そして, 以上のような結果は, 社会的遮断の仮説にもとつく硬さに関する動機づけ理論に対して, 支持を与えるものであるといえる。しかしながら, 社会的遮断のとらえ方や実験者効果についてのとらえ方等において多くの問題点が指摘され, それらは今後の課題として残された。

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