教育心理学研究
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権威主義の形成過程
母子間の態度伝達
五十里 玉喜岡田 啓子小口 秀子藤田 美弥子藤永 保
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1971 年 19 巻 3 号 p. 139-151

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抄録

権威主義的人格の形成について, 母子関係に注目して, 質問紙法による調査を行なった。母子の権威主義的態度を測るものとして, 日本の伝統的文化体系を考慮に入れたF尺度を作成し, しつけについては, 権威主義という観点から, 母子双方からの情報を得た。
結果より主に次のことが明らかにされた。
(1) 子どもの社会的態度形成には, 母親の態度の直接的および間接的伝達が関係していると考えられる。
(2) 母親の態度の子どもへの伝達パターンには, 発達差と性差があり, 全体的に, 男子より女子の方が母子間の相関が高い。
(3) 女子の場合, 低年齢の時には, しつけを媒介にして母親の社会的態度を学ぶが, 中学1年ごろになると, しつけに加えて母親の態度自体をもモデルにするようになる。さらに中学3年になると, しつけの影響から脱し, 母親の社会的態度そのものをモデルとして, 真の意味での自分の社会的態度を形成してゆくと考えられる。
(4) 男子の場合, 女子より一足早く小学6年ごろに, しつけを媒介とせず, 直接的に母親の社会的態度をモデルにして, 自分の態度を形成する。そして, 年齢が上るに従い急激に母の影響から脱し, 社会化のモデルを母親以外の対象に求める傾向がうかがわれた。

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© 日本教育心理学会
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