教育心理学研究
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幼児の概念的分類行動におよぼす教示効果
北尾 倫彦秦 淑子
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1971 年 19 巻 4 号 p. 232-241

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抄録

概念的カテゴリーによる分類を促がす教示効果を検討するために2つの実験が行なわれた。実験Iは, 4, 5, 6才のおのおのの年齢群において, 概念名辞をまえもって教示される教示群とそのような教示を受けない統制群が設けられた。課題は16枚の絵単語カードを4つのクラスに分類することであり, 果物, 野菜, 花, 鳥の4概念に4枚ずつを分類できるように構成されていた。結果は, 概念的カテゴリーによって分類した率 (概念的分類率) と分類理由として適切な概念名辞を報告した率 (言語化率) によって分析された。そうすると, 4, 5才児では概念名辞の教示によって概念化が保進されたが, 6 才児ではそのような教示効果がみとめられなかった。
実験IIは, 4才半から5才半にわたる年齢群のみについて, 実験Iと同じ概念名辞の教示群, 事例に共通した特徴を述べる説明的教示群および統制群が設けられた。課題は基本的には実験Iと同じであるが, 概念として哺乳類, 鳥類魚類, 昆虫類をとりあげ, マッチングによる分類課題が採用された. 実験は事前課題, 特殊教示, 事後課題, 転移課題の順に進められ, 実験Iと同じ2つの測度によって効果が判定された。その結果, 事後課題および転移課題において, 概念名辞の教示は概念化を促進するが, 説明的教示はそのような効果を示さないことが明らかにされた。
これらの実験結果はわれわれの仮説を支持するものであり, 言語的媒介の欠如した段階にある幼児に対しては, 概念名辞を教示することによって分類の概念化が促がされるといえる。しかもこの種の教示効果は刺激材料に関する観察反応を増すことによるものではなく, 朗らかに言語反応による媒介効果であることが考察された。

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© 日本教育心理学会
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