教育心理学研究
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弁別移行学習における媒介過程の実験的研究
梶田 正巳
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1972 年 20 巻 3 号 p. 137-146

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抄録

移行学習の研究を振り返ってみる時, 研究者の立場によって, さまざまな媒介機序の仮定されてきたのがわかる。たとえば, Kendlerらの発達的媒介理論では, 言語的性質の媒介子が, 刺激の物理的次元に対応して考えられてきた。それゆえ, 媒介反応は, 物理的な次元や値が, 言語的, 概念的な事象へ変換される時に生起した。この考えに基づけば, 次元性のない刺激が用いられると, 媒介反応は成立しないことになる。しかし, 著者の考え方によれば, 先行学習と後続の学習の間に, 刺激の集合の完全な対応関係があれば, 媒介機序が作動し得る。この意味で, 媒介反応は, 必ずしも刺激の次元性のみには規定されていない。本研究では, まず, それぞれの学習の段階の刺激の集合の状態を, 集合論の術語を使って規定した。すると, 刺激の集合, たとえば, 集合, 補集合, 排中律の把握とその論理操作に関して, 発達仮説が成立した。この仮説を基礎に, 移行学習について, 特に, 成人の次元によらない媒介機序の存在を確かめるため, 次の作業仮説を導いた。
作業仮説1: 第1, 第2学習を通じて, 刺激の集合に対応関係がみられ, 要素の変化も認められないRS課題が, 集合の変わるNRS, C課題より容易に学習されよう。
作業仮説2: 集合の要素の変化の点で同じNRS課題とC課題は, ほぼ似た困難度であろう。
この仮説を検討するため, 大学生を被験者に, 無意味綴りを刺激語, 数字を反応語として, 移行学習形式の対連合学習を実施した。結果は, 学習基準までの試行回数と誤り数の測度で, 非次元性の媒介機序を認める作業仮説を支持した。次に, 被験者の学習型から分析を試みると, RS条件下で, 媒介型学習者がその他の型の学習者よりも有意に速く, また誤りも少なく学習を遂行した。これらの結果から, 次元性によらない媒介機序が, 促進的に作用すると結論づけ得よう。従属変数を予測するという観点に立って, 実験者の設定した外部分析基準と実際に被験者の採った学習型の内部分析基準から, それぞれの従属変数について関連度を推定し討論した。また, 著者の考え方とKendlerらの理論との関わりについても論議した。

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