教育心理学研究
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想像物語にみられる達成動機づけの実験的喚起の効果
林 保山内 弘継須藤 亘
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1972 年 20 巻 3 号 p. 179-183

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抄録

本研究の目的は, McClellandが指摘した動機測定の基準, すなわち“動機の測定では, 動機が存在するか否かとか, その強度の変化が, 敏感に反映されねばならない”および“動機の測定では, その動機だけの変化が反映されねばならない”という2つの基準に従って, 実験的に達成動機を喚起した場合に想像物語の内容に変化が生じるかどうかを検討することである。
被験者は小学校児童232名で, 各児童は約2か月の間隔をおいてTAT形式による達成動機の測定を2回うけた, 実験条件は教示で導入し, 達成動機を喚起する喚起事態と中性事態とした。第1期では, 全被験者が中性事態で想像物語を書き, 第II期では半数が中性事態で (中性事態群), 残りの半数が喚起事態で (喚起事態群) 想像物語を書いた。
想像物語の内容からMcClellandらの判定規準に従って達成要求得点を求め, 喚起事態導入による効果を分析した。両事態群の第I期から第II期への平均達成要求得点の変化を共分散分析したところ, 条件導入による効果が有意であることが認められた。すなわち, 喚起事態を導入することによって想像物語の内容に達成動機づけを示す記述内容が増大した。さらに, この効果のあらわれを達成動機水準との関連において検討するため, 高達成動機群, 中達成動機群, 低達成動機群の3つの群に分けた。測定上の制限などが考慮されねばならないが, 全体的にみて達成動機水準が低いほど, 喚起事態の効果による影響が大きかった。
また, わが国の児童を対象とする達成動機測定用の図版を試作することもできた。

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