教育心理学研究
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Personal Spaceの異方的構造について
田中 政子
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1973 年 21 巻 4 号 p. 223-232

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抄録

personal spaceの構造が異方的であることを検証するため,「近すぎて気づまりな感じがする」という基準によって二者の間にとられる物理的距離 (対人距離) の測定がされ, との距離は「自己にとっての他者の刺激価が一定である距離」と見做された。測定は, 明空間と暗空間において, 被験者が特定の人物 (同年齢の初対面の同性) に近づいて行く場合 (接近距離) と, その人物が被験者に近づいてくる場合 (被接近距離) について, それぞれ, 身体を中心とする前後・左右の両軸によって照合される等角度の8方向に関してなされた。被験者は MPIによって抽出された内向群, 外向群の男子学生であった。
この結果, 各方向での対人距離について, 左右に関し七の非対称性は認められず, 正面から後方へと, 身体の正中面に対しての角度が増大するにつれて, 対人距離は単調に減少するという傾向がみられ, personal space に異方的構造を想定することが妥当であるとされた。
また, 内向性の者は, どの方向についても外向性の者より大きな距離を取ることが見出された。しかし, 両者とも方向間の関係については上記の関係が保たれており, 両者のpersonal spaceは, 異方的構造は同じで大きさの異なることが示唆された。
空間の明るさの違いは, 接近距離にはそれ程影響を与えず, 被接近距離についてのみ明空間での後方の距離を著しく減少させるという結果を得た。この結果および視覚的要因の効果についての探索的実験の結果より, 視覚的接触その他の異方性の規定因についての検討がなされた。

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© 日本教育心理学会
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