教育心理学研究
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音読の速さおよび非流暢性に及ぼす遅延聴覚フィードバックの効果
原野 広太郎田上 不二夫
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1976 年 24 巻 3 号 p. 167-176

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抄録

この研究は, 日本語の音読材料を用い, 遅延聴覚フィードバックの効果を音読速度および非流暢性について明らかにしようとした。実験は2つから成っていた。実験 Iでは遅延時間. 30秒までの5段階について, 普通文と普通文に対応する音数, 排列をもつよう統制した無意味綴 (ランダム語) を用いて音読時間と非流暢性を測定し, 遅延時間の効果と音読材料によるDAF効果の差異をみた。実験IIでは普通文は実験Iと同じ種類の材料を用い, 単語として, 1つは一定の熟知度を有する熟知語とこの熟知語に音数と排列を対応させたランダム語を用い, 遅延時間. 50秒までの遅延効果と, 音読材料によるDAF効果をみた。被験者は実験I, IIとも大学生で, それぞれ7名, 15名であった。装置はテープレコーダの録音ヘッドと再生ヘッドとの間隔を利用し, さまざまな遅延時間を得た。遅延時間は実験Iでは,.00秒,.11秒,.15秒,.20秒,.25秒,.30秒, 実験IIでは更にその上,.35秒,.40秒,.45秒,.50秒を加え, 10段階である。教示は, 両実験とも, 被験者に渡した紙に書かれている文, 単語あるいは無意味綴を, いつも読んだり, 話したりする速さで読んで下さいというものであった。被験者の音読は他のテープレコーダで録音され,(1) 音読時間 (2) 音読時間延長比 (3) 6つの特徴から成る非流暢度の3つの測度についてそれぞれ決められた単位で分析された。
実験I, IIで得られた結果はつぎの通りである。
(1) 普通文のDAFの最大効果遅延時間は. 20秒であり,. 30秒を越えると, 音読速度の単調な増加すなわち DAF効果の減弱がみられる,
(2) 普通文の音数と排列に対応させたランダム語では普通文に比べ音読速度が著しく小さいが, 遅延時間との関係でいえば両材料の速度変化のパターンはきわめて類似している,
(3) 熟知語の音数, 排列に対応したランダム語では, 変化パターンも音読速度も熟知語に類似している。このことは, 音読速度そのものは文と単語の差異に依存し, 遅延時間との関係ではその変化パターンは音の数, 排列に依存していることが示された。従って熟知性にはあまり関係がない,
(4) DAF条件がない時の音読時間を基準とした各遅延時間の音読時間を示す延長比では,. 20秒と. 25秒では普通文においてDAF効果が大きく, 熟知語がそれにつぎ, ランダム語がもっとも小であった,
(5) 普通文と同じ音数, 排列をもつランダム語ではむしろ普通文と同じ延長比を示すので, 延長比には音読材料の音の構成と熟知性との交互作用が働くと考えられる,
(6) 遅延時間. 30秒以上では普通文はDAF効果が減少するが, 熟知語とそれと対応するランダム語では増大する,
(7) 非流暢度はランダム語, 普通文, 熟知語の順で減少する。普通文の最大効果遅延時間は. 25秒である,
(8). 25秒以上では普通文, 熟知語ともに非流暢度めの減少がみられるが, ランダム語では必ずしもこの現象がみられない。

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© 日本教育心理学会
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