本研究は, 発語行動における呼吸運動のプロセスを, 腹部運動, 音声, 呼吸流量の3側面から同時に測定した。次に, 発話課題をかえた場合の腹部運動プロセスを検討した。被験者は女子の大学生60名から肺活量の多い群5名, 少ない群5名が選ばれた。結果として次のようなことが示唆された。腹部運動と音声と呼吸流量は相互に協応しあって腹部運動が収縮してから呼息と同時に音声が出され, 音声が終り, 呼息が終り, 呼気が終る発語逐行をしている。また, 発語課題の違いによって発語直前の腹部運動に要する時間に変化がみられ,(1)促進 (長音, 無意味語),(2)平行 (一般語)(3)抑制 (タブー語) の3型が考えられ, 腹部運動の意図的なコントロールによる影響が考えられた。