教育心理学研究
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幼児の法則学習における「劇化」教材の効果
麻柄 啓一伏見 陽児
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1980 年 28 巻 3 号 p. 212-218

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抄録

本研究は, 幼児の法則学習における「劇化」教材の効果を検討したものである。
われわれは, Brunerの提案する劇化装置 (dramatizing devices) にさらに厳密な概念規定を与え, 学習されるべき事実や法則が一連のストーリーの中で提示されるだけではなく, さらに, それらめ事実や法則がストーリーの筋や結末を左右するようになっているとき, これを「劇化」教材と呼ぶことにした。このような「劇化」教材が幼児の法則学習を有効に援助し得ることを調べるのが, 本実験の目的であった。
対象児は, 平均年齢6歳3か月の幼児48名であり, 事前テストの結果から等質な2グループに分けた。一方にはわれわれの作成した「劇化」教材を, 他方には非「劇化」教材を与えて, 重さの保存の法則を教授した。結果は以下のとおりである。
(1)「劇化」教材で学習したグループ (dt群) は, 非「劇化」教材で学習したグループ (nd群) より, 事後テストで有意に高い得点をあげた。
(2) 再生課題, 転移課題とも, dt群がnd群にまさった。
(3) 事前テストの成績から対象児を高成績群と低成績群に分けた場合, dt・高成績群とnd・高成績群の問には, 事後テストの得点に有意な差はなかったが, dt・低成績群はnd・低成績群より事後テストで有意に高い得点を示した。
(4) 教材提示の回数 (1回or2回)は, 事後テストの成績に影響を与えなかった。
(5) 事後テストで, 実物を用いて質問する方が, 同一事態を絵カードを用いて質問するより, 高い得点をあげる傾向があった。

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