教育心理学研究
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幼児の自由再生と制限再生におよぼす関連画と文章化の効果
藤田 正
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1980 年 28 巻 4 号 p. 332-335

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抄録

本研究の目的は, 記銘時に提示する関連画と, 関連画と項目の関係についての文章化が, 幼児 (平均6歳2か月) の自由再生と制限再生におよぼす効果について検討することであった。
2×2の要因計画が用いられた。第1の要因は文章化の条件で (文章化の有・無) であり, 第2の要因は再生条件で (自由再生と制限再生) であった。これらの要因の組み合わせによる4条件の他に, 記銘時にも再生時にも何ら手がかりの与えられない統制条件が設けられた。
統制条件では, 記銘時に項目だけを呈示し, 自由再生させた。他の4条件では, すべて関連画が与えられ, そのうち文章化条件の者には, 記銘時に“動物園にライオンがいます。”のような教示が与えられた。文章化のない条件では,“これはライオンです。”のような教示が与えられた。さらに各々の条件のうち半数は再生時に関連画が与えられる制限再生条件に, 残り半数は自由再生条件に割りあてられた。
主な結果は次のとおりである。
(a) 記銘時の手がかりとして関連画が提示されるだけでは成績に影響しないが, 関連画と項目の関係を文章化することにより成績が促進した。
(b) 関連画の効果は, 記銘時よりも再生時に与えた場合に大きかった。
(c) 再生時の関連画の効果は, 文章化がなされた場合に大きくなる傾向がみられた。
以上の結果から, 幼児では再生時に手がかり利用の欠如が大きいこと, 手がかりの利用を促進させるためには, 関連画手がかりの提示に加えて, 項目と手がかりの関係を文章化して記銘させることが必要であることが明らかになった。

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© 日本教育心理学会
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