教育心理学研究
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非行少年の自己概念
Q-テクニックによる分析
宮野 祥雄
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1981 年 29 巻 1 号 p. 10-19

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抄録

本研究の主な目的は, 非行に走る青少年と走らない青少年の自己概念の相違を明らかにすることであった。
この目的を達成するために, 筆者は64枚のQ-分類カードを作成した。
「Stephensonの標本構造化の手続」に基づいて, それらのステートメントは“社会的自己”, “意志”と“自己評価”の要因によって構造化された。次の仮説が上の手続を経て, 検討された。
仮説IA: 非行に走る青少年は,反社会的な自己概念をもつ度合が強い。
IA'; IAが矯正処遇中の青少年にも適用できる。
IB: 非行に走らない青少年は, 社会的に望ましい自己概念をもつ度合が強い。
IIA: 非行に走る青少年は, 意志が堅すぎるか弱すぎるかのいずれかに偏った自己概念をもつ度合が強い。
IIA': IIAが矯正処遇中の青少年にも適用できる。
IIB: 非行に走らない青少年は, 前述の両方向のいずれにも偏らない自己概念をもつ度合が強い。
IIIA: 非行に走る青少年は, 否定的な自己概念をもつ度合が強い。
IIIA': IIIAが矯正処遇中の青少年にも適用できる。
IIIB: 非行に走らない青少年は, 肯定的な自己概念をもつ度合が強い。
対象者は, 非行の矯正のため, 施設で生活している生徒(矯正処遇群)25名, 1年以内に, 非行と所轄庁による補導の記録が, 教師によって確かめられた一般中学生 (非行群) 11名, 1年以内に非行に走ったことがないと教師によって確認された一般中学生(正常群)11名である。
主な結果は次のとおりである。
Q-分類結果の群別分散分析(要因の主効果とその水準の方向)から, 仮説IA, IB, IIA, IIA', IIB, IIIBが支持された。また, 個人別分散分析の結果 (要因の主効果及びその水準の方向) は, 要因の主効果の水準の方向に関する下位の計算値を考慮すると, 矯正処遇群に属する青少年の社会的自己の主効果及びその水準の方向を除き, 群別分散分析の結果 (要因の主効果及びその方向) を支持する傾向にある。
因子分析及び因子得点の行列に行った分散分析の結果から, 第1因子は“社会的自己”の水準の1つである“社会的”方向にかかわり, 第2因子は“社会的自己”の“反社会的”方向にかかわっていることが明らかである。これらのことは, 群別及び個人別分散分析の結果を補完するものであると言えよう。

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