教育心理学研究
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接続詞明示と推理能力が乱脈文の多試行自由再生における体制化に及ぼす影響に関する発達的研究
池田 進一
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1981 年 29 巻 3 号 p. 207-216

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抄録

本研究は, 多試行自由再生事態で材料文間の接続関係明示の多少と演繹的推理能力との関連を発達的に検討したものである。小学校5年生40名と中学校1年生35名の被験者は接多群 (文間に6つの接続関係をあらわす語を含む7文を記銘する群) と接少群 (文間に2つの接続関係をあらわす語を含む7文を記銘する群) とにそれぞれ分けられた。物語構造をもった7文は, ランダムな順序で5回提示され, 毎回自由再生が求められた。その後, 原文章を復元できるかどうかを調べるために文順序配列テストが実施された。ついで, 石田 (1978, 1980) による推理能力テストが施行された。
結果は以下のとおりであった。
1)(a) 文順序配列テストでは各群12名ずつ計48名が正解した。
(b) 中1では2群とも試行を重ねるごとに文の再生順序が原文章と同じになっていく現象 (文脈的体制化) が認められたが, 小5では2群ともそのような現象は見られなかった。
(c) 小5では, 文脈的体制化に関して, 接続詞明示の多少と推理能力との間に順序的な交互作用が存在する傾向が見出された。すなわち, 接多群における推理能力の高い者には文脈的体制化を生起しやすい傾向があったが, 接少群においてはその傾向はなかった。中1では小 5におけるような結果は見られなかった。
2) 文順序配列テストで不正解だった27名のデータは適宜分析された。その結果, 文順序配列テストの成績は, 推理能力テストと再生テストの成績と対応していることが示された。
以上のような結果は, 情報処理能力の発達という観点から考察された。

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