教育心理学研究
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青年期における「疎外感」の発達と適応との関係
宮下 一博小林 利宣
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1981 年 29 巻 4 号 p. 297-305

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抄録

本研究では, 疎外感尺度を作成し, 青年期における疎外感の発達的変化および疎外感と適応との関係を検討した。主な結果は, 次の通りである。
1. 疎外感は青年期において発達的に減少する。
2. 疎外感は自我同一性 (古沢の尺度による) と負の有意な相関がある。
3. 問題児は, 問題を持たない者に比べ有意に高い疎外感を示す。
しかし, 次のような問題や限界も考えられる。
第1に, 疎外感の発達的変化は, 横断的方法により分析されたが, これは, 対象の選択の仕方により, 結果が若干異なる可能性もある。今後さらに, 縦断的研究によって, この点を検討することが必要であろう。
第2に, 疎外感と適応との関連を分析する場合に, 疎外感の強弱という量的側面からの接近のみでは, 十分でないことが考えられる。たとえば, 疎外感をどうとらえるか (受容できるもの, 或は拒絶すべきものと感じるなど) により, 適応の様相も異なってくると想定される。このような観点からは, 疎外感は問題行動などのネガティヴな心理側面と密接な関わりを持つと同時に, 独創性や創造性などの人間の積極的な行動特性との関連において, ポジティヴな側面から問題にすることも可能であろう。
第3に, 本研究で抽出された問題児はすべて, 非行傾向の者であった。現場の教師が, 特に指導に窮するのは, このような行動化を伴う生徒であることが多いが, 自閉的傾向や学業不振の者など他の様相の問題児も含め, 疎外感との関わりや各問題児間の疎外感の特徴を明らかにすることも必要と思われる。

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© 日本教育心理学会
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