本研究では, 人物画知能検査 (DAM) の妥当性を検討するために, 人物情報の一過的呈示が幼児の人物画に及ぼす効果を分析した。
被験者は3, 4, 5歳児各40人ずつであり, 人物画の事前測定が実施された後, 情報呈示群と情報非呈示群 (統制群に相当) に2分された。情報呈示群に対して呈示された人物情報は, 各年齢群の事前人物画得点の平均に10項目 (10点) 分加算した人物画であった。そして, 情報呈示の直後, 1週間後, 1か月後の3回にわたって人物画の事後測定が行われた。
事後人物画得点と事前人物画得点との差である人物画変化得点の分析結果から, 人物情報の一過的呈示は DAMの得点を大きく上昇させ, しかもその効果は1か月後でもかなりの程度持続することが明らかとなった。なお, 情報呈示効果を, DAMにおけるMAおよびIQ の変化として捉えた場合も同様の現象が認められた。
従って, 人物情報の一過的呈示が人物画を長期的に変動させるという本研究の知見は, DAMの妥当性に対する批判を提出した。