教育心理学研究
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「空書」行動の発達
その出現年齢と機能の分化
佐々木 正人
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1984 年 32 巻 1 号 p. 34-43

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抄録

本研究は, 日本人成人では, ほぼ100%の者に観察された「空書」行動の発達を7歳から12歳の児童を対象として2つの実験から検討した。
実験1, 空書行動出現率の発達
各年齢, ほぼ70名, 全体で447名を対象とした観察で, 漢字字形素統合課題遂行中に空書を自発した者は, 7歳で11.8%, 8歳で5.6%, 9歳で22.2%, 10歳で56.7%, 11歳で57.3%, 12歳で66.7%であった。空書行動の出現には, 9歳から10歳にかけての段階的とも呼べる大きな変化を含む発達的変化のあることが明らかとなった (FIG. 1)。また, 自発する空書行動には, 書字面のあるタイプと書字面のない空中での空書という2つの行動形態があり, それらの相対的な割合にも発達的な変化がみられた (FIG. 2)。
実験2, 空書行動の機能の発達空書行動を自発した者及び自発しなかった者を対象とした実験で, 2つのタイプの空書行動の機能が空書を禁止する条件と比較された。結果は以下のようにまとめられる (FIG. 4)。
1. 最も効果のある空書手続は紙上空書手続である。紙上空書群では, 11, 12歳で空書群, 自発あり空書禁止群よりも有意に正答数が多い。
2. 書字面のないタイプの空書を許可された群 (空書群) では, 12歳までに空書の効果は明確には表われない。
3. 自発した者に空書を禁止する条件では空書禁止の効果 (正反応の減少) が11歳以降で表われる。
4. 自発しない者は禁止条件にあっても, 紙上空書条件につぐ高い正答数を得た。このことはこの群での空書に依存しない有効な解決方略の存在を予想させた。

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© 日本教育心理学会
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