教育心理学研究
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幼児の自己評価と行動基準の設定が歯みがき行動に及ぼす効果
河木 肇
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1985 年 33 巻 4 号 p. 307-314

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抄録

本研究は, はんこ押しという自己評価手続によって, 保育所幼児7名の歯みがき行動は変容するかどうか, また自己評価の行動基準として, 一般的な行動基準と明確な行動基準を設定し, 両者の歯みがき行動に及ぼす効果を比較することを目的に, 単一被験者実験計画法のうち反復法 (1. プリチェック2. ベースラインI3. ベースラインII4. 自己評価I5. ベースラインIII6. 自己評価II7. ベースラインIV8. 自己評価III9. 改訂自己評価) を導入して, 実験が行われた。自己評価I・II・IIIでは, 自己評価の判断が一般的な行動基準: きれいにみがけたかどうか, 改訂自己評価では2種類の明確な行動基準: みがいた時間は長かったかどうか, 全部の歯をみがいたかどうか, に基づいていた。
主な結果は, 次の通りであった。
1. 自己評価手続によって, 保育所幼児の歯みがき行動の変容は可能であった。
2. 一般的な行動基準よりも明確な行動基準を設定した場合, 歯みがき行動は著しく改善された。
3. ベースラインI・IIと比べてベースラインIII・IV では, 歯みがき行動の変容がみられた。
これらのことから, 自己評価の行動変容機能とそれを支える機構について論じた。そして, 幼児保育における自己評価導入の意義を示し, さらに内潜的自己評価の存在可能性について示唆した。最後に, 自己評価の要因として, 行動基準の設定による手がかりの利用のしやすさという点から検討した。

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© 日本教育心理学会
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