教育心理学研究
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都市および農村に於ける児童と青年の知的差異について
知能の因子分析的研究
江川 亮
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1969 年 4 巻 2 号 p. 36-43,63

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抄録

1) 都市と農村の児童および青年に田中A式, B式両団体知能検査 (いずれも1型) を実施した結果, その知能偏差値において都市が優れ, 特にA式検査においてはより大きな差をもって都市が優れていることが示された。
2) しかし下位検査問題の成績はそのすべてにおいて都市が優れているとは限らず, B式検査の検査1〈迷路〉以下, 検査2〈立方体の分析〉, 検査3〈幾何学的図形構成〉および検査4〈置換〉の問題の平均点において農村が優れ, 学年によっては有意の差をもって農村が優れている場合も認められる。
3) 多因子法による因子分析を適用し吟味した結果, 第1因子Mental alertness, Verbal meaning, Induction, Memory及びSqaceの5因子を推定したがMental alertnessの因子は他4因子に比し, 各下位検査問題におけるその負荷量が顕著に高く, この因子は都会児童と農村児童との成績に差を決定する最も有力な決定因子であろうと考えられる。
4) 上述の如く決定因子と思われる第1因子Mental alertnessを除く他4因子はその因子負荷量から附随的な意味だけしか持たぬ因子と考えられるがMemoryの因子と, 特に空間構造認知の因子即ちSpaceの因子によって説明される能力においては, 両児童間に顕著な差がないように思われる。
5) 都鄙児童の知能差と題したものの一つの試みを提出したに過ぎない。更にGottschaldt, Rey等の所謂実用的知能, 或はOseretzkyの運動脂等についても見られる差異を, その児童が位置する社会的な階層との関係において捉え, 比較検討を進めたいと考えているが, 一応の結果を述べて御批判と御教示をお願いする次第である。

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