教育心理学研究
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再認が可能になる時期とエピソード報告開始時期の関係
縦断的調査による事例報告
上原 泉
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1998 年 46 巻 3 号 p. 271-279

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抄録

成人は, 3, 4歳以前のことをなかなか思い出すことができず, この現象は乳幼児健忘と呼ばれている。近年の記憶研究では, 顕在記憶は, 潜在記憶よりも遅れて発達するといわれているが, いつ頃からどのようにこれらの記憶が発達するのかに関してはほとんど報告がない。本研究では, 4歳前では顕在記憶が十分に発達していないために, 4歳前のことを自覚的に思い出すことが困難なのではないかと考えた。これを検証するため, 再認 (過去に見たか否かの判断) と過去の個人的な出来事を語り始める能力の発達過程を縦断的に追跡した。その結果, 1. 再認が可能になるのは, 3歳以降であること。2. 過去の出来事を語り始める時期は, 再認が可能になる時期より早い場合があること。3. 過去の出来事を語り始める時期は, 初語時期に依存するが, 再認が可能になる時期は, 初語時期や過去の出来事を語り始める時期に直接的には依存しないこと, が示された。これらの事実に基づき, 言語や意識との関係を念頭においた, 記憶発達に関する新たな仮説を検討した。

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© 日本教育心理学会
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