1999 年 47 巻 3 号 p. 273-282
本研究は子どもが他者との関係性に応じて, どのように情動を表出するようになるのか, 児童期中期に焦点をあててその発達的変化を検討した。被験者は小学校2年生から5年生, 計1466名である。各人に, 物語中の主人公が怒りや喜び, 悲しみを経験する物語を読ませた。そして母親, 父親, 友達に対して, もしその子が自分だったらどの程度情動を表出するか, 答えさせた。また関係性の指標として, 他者と共にいる時の自己, ソーシャルサポートを取り上げ, それぞれ子どもに評定させた。その結果, 低学年 (2・3年生) と高学年 (4・5年生) とでは, 他者との関係性と情動表出との関連は, 異なることが示唆された。また各情動ごとに, 関係性と情動表出との関連は, 異なる変化を示した。喜び表出は, 低学年で肯定的関係性と相関がみられ, 高学年ではその関連がより強くなった。また怒り表出は, 高学年では関係性との間にほとんど関連はみられなかった。この結果は, 情動の発達における対人関係の役割を重視すること, 及び各情動ごとに, 個別に検討する必要があることを示唆している。