教育心理学研究
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児童の物語創作における創造性に関する一考察
問題-解決構造の枠組みによる分析
夏堀 睦
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1999 年 47 巻 3 号 p. 305-316

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抄録

本研究の目的は, 児童 (小学2, 4, 6年生) の物語創作を, 創造性と関連する「問題―解決」構造を用いて, 教示時の物語の設定との「ずれ」の観点から学齢と性差によって分析し, 創作された物語の内容の変化から児童期の物語創作の発達的特徴を検討することであった。創作された物語は,(1) 解決の種類から4つの解決タイプ (積極的自己解決, 積極的協力解決消極的自己解決, 援助者による解決) と解決不可, その他の 6カテゴリー,(2) 物語の展開に基づき導入部の問題の認知と新たな問題の設定の有無の組み合わせから 3つの解決群に分類された。解決タイプの出現率には有意な学年差がみられ, 6年では有意な性差も存在した。学齢の上昇に伴い他者が介在する解決が増加する傾向がみられたが, 6年男子がこの傾向に該当しない要因として破壊的な表現への嗜好が影響していると考えられた。解決群の出現率には学年差がみられ, 特に女子では学齢の上昇に伴い児童が独自に設定した新たな問題に関連づけて物語を創作する傾向が見られた。

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© 日本教育心理学会
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