教育心理学研究
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小学生は文を理解・記憶する場合にオンラインで推論を働かせているか?
鈴木 ゆかり
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2000 年 48 巻 1 号 p. 1-11

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抄録

本研究の目的は, 小学生が道具を暗示している文を理解・記憶する時, 文に暗示されている道具をオンラインで推論しているか否かについて単語完成課題と再生テスト課題を用いて比較検討することである。実験1では, 道具を暗示している単文を学習する条件と道具が明示されている単文を学習する条件を設けた。実験2では, 道具を暗示している単文を学習する条件と文脈を付加した文章 (3文からなる暗示文) を学習する条件を設けた。実験1と実験2の手続きは基本的に同じであり, 学習文を読んで理解・記憶した後, 単語完成課題と再生テスト課題を実施した。もし推論がオンラインで行われているのであれば, 文中に暗示されている道具それ自体も文中に記述されていたかのように処理され, 次のような仮説が予測される。学習文に暗示されている道具名 (ターゲット語) の生成率は, 学習文と無関連な単語 (非ターゲット語) の生成率および学習文を先行提示しない場合のターゲット語の生成率を上回る (仮説1)。また, 文中に暗示されている道具名はその文の再生に関して有効な手がかりとして働く (仮説2)。結果は上述した2つの仮説 (1)(2) を支持するものであり, 低学年児童においてもオンラインで道具に関する推論を行っていることが示唆された。但し, 学習する暗示文が, 単文であるか文脈をもつ文章であるかによる生成率の差異はなく, 文脈を付加することによる推論の促進効果は見られなかった (実験2)。

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