教育心理学研究
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筆記具操作における上肢運動機能の発達的変化
尾崎 康子
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2000 年 48 巻 2 号 p. 145-153

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抄録

本研究の目的は, 幼児の筆記具操作における上肢運動機能の発達変化を検討するとともに, それらの上肢運動が筆記具の持ち方や上肢部位の机との接触状態と如何なる関連性を持ちながら推移していくのかを明らかにすることである。2歳6か月から5歳9か月までの214名の幼児を対象に, ペンで円を塗りつぶす課題を行い, その描画時の様子を4方向からビデオカメラで同時記録した。幼児が円を塗りつぶしている間の上肢の動きを関節運動として分類した結果, 年少幼児では近位の上腕や前腕が動く粗大な動きに対して, 年長になるにつれ次第に遠位の指を動かす微細な動きが可能となる発達変化を捉えることができた。このような上肢の関節運動の発達は, 上肢運動系の内的拘束を獲得していく過程であると考えられる。さらに, 筆記具の持ち方や上肢部位が机に接触する状態は上肢運動と互いに絡み合いながら発達的に移行し, 上肢運動発達をさらに強化するように作用して, 遠位の上肢運動をより一層引き出し易くしていくと考えられた。

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© 日本教育心理学会
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