教育心理学研究
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幼稚園の食事場面における子どもたちのやりとり
社会的意味の検討
外山 紀子
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2000 年 48 巻 2 号 p. 192-202

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抄録

都内公立幼稚園の4~5歳児の食事場面における, 子どもたちのやりとりを検討した。研究1では, 4歳児クラス秋~5歳児クラス秋まで, 研究2では, 入園したばかりの4歳児クラスの夏までを観察した。結果は, 以下の3つにまとめられる。第1に, 幼稚園の食事場面では, 多様なやりとりがみられた。時間の経過に伴い, 食べることに直接関連したやりとりは減少したが, 一般的な内容のやりとりは増加した。新入園当初でも, 同様の変化があった。第2に, 研究1・2において共に,“……あるひと, てーあげてー”という発問と, それに対する“ハーイ”という応答からなるルーティンがみられた。このルーティンは, 研究1では4歳児クラスに多くみられた。4歳児クラス秋, および新入園当初においては, ルーティンが使われた場合, やりとりの参加者人数が多く, やりとりは持続的だつた。5歳児クラスになると, ルーティンが使われない場合の方が, 参加者数が多く, やりとりは持続的になった。このルーティンは, ある特定の時期において, やりとりへの参加とその維持を助ける役割を有するらしい。第3に,“……あるひと, てーあげてー”のルーティンは, 研究1・2において共に, その構造面における変化がみられなかった。

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© 日本教育心理学会
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