教育心理学研究
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心理測定尺度のコンピュータ・テスト化に向けての最近の動向
廣瀬 英子
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2000 年 48 巻 2 号 p. 235-246

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抄録

本論文ではパーソナリティ, 興味, 社会的態度などの心理測定尺度のなかで, 3件法, 5件法などと呼ばれる多段階評定尺度について, 測定方法に関する現在の動きを展望した。はじめに, 現在コンピュータ・テスト化されている心理測定尺度にどのようなものがあるかを概観した。コンピュータ化の際には, 紙筆式の場合との同等性を確認する必要がある。これまでの研究では, その多くは同等性の条件を満たすと判断されている。しかし, 測定内容や測定対象者によっては, テスト形態が結果に影響する場合もあり, コンピュータ式の回答方法が適切かどうかを慎重に判断しなければならない。続いて, 心理測定尺度に対する項目反応理論の現在の適用状況をまとめた。多段階評定尺度に適用できる多値型モデルにはいくつかの種類がある。これまでの研究で, 因子分析で一次元性が確認されている尺度に対してこれらのモデルを適用することによって, さらに細かい項目分析を行うことができ, 項目を精選して尺度の精度を高められることが確認されている。これらのことをふまえて, コンピュータ・テスト化された心理測定尺度に項目反応理論を適用して, それをさらに有効に活用する方法を検討した。適応型テストの形式, あるいは診断型テストの形式を取り入れること, また, 紙筆式の発想にとらわれない新しいテストを考案することなどが今後の課題である。これまで行われてきた, 既存の紙筆式の尺度をコンピュータ・テスト化する手続きは, 将来的に心理測定をコンピュータ上で行うことを考えたときに必要ではあるものの, 単調な作業であった。しかし, この段階でコンピュータ化を止めることなく, 項目反応理論をいかした, 内容面でも方法面でも新しい心理測定尺度づくりにつなげることが重要である。

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© 日本教育心理学会
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