教育心理学研究
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学習障害児に対する動機づけ介入と計算スキルの教授
相互モデリングによる個別学習指導を通して
植木 理恵
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2000 年 48 巻 4 号 p. 491-500

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抄録

従来の教育心理学が推奨してきた学習態度として. 「内発的な学習動機」と「理解を重視する学習」の 2点が挙げられる。本研究は, 1人の学習障害児への引き算の個別指導を通して, これらの知見を実践場面で活用していくにはどのような工夫が必要であるか検討したものである。介入方針としては, 課題関与的な動機づけの前に「計算が使えるようになりたい」という実用志向からの動機づけを試み, さらに理解の前段階として計算手続きの獲得を先行させた。また, その手続き教授の際には「相互モデリング」という介入手法を開発し試みた。相互モデリングとは, 教示者と学習者が互いの思考過程を観察し合うことによって正しい手続きを獲得しながら, 効率的に自分の間違いパターンを自覚・修正するための教育的介入法である。本研究では, この新しい介入法の提案と検討も行った。このような指導の結果, 学習者は短期間で引き算の手続きを獲得することができ, 次第にその意味理解も伴うようになった。同時に, 問題解決時の不安を自己調節する動機づけ方略を相互モデリングに取り入れることにより, 自己効力感が低く注意散漫であった学習者が, 最後まで根気強く課題に取り組むことができた。

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© 日本教育心理学会
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