教育心理学研究
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関係情報と項目特定情報の符号化が軽度知的障害児の記憶に及ぼす効果
島田 恭仁
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2001 年 49 巻 1 号 p. 50-59

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抄録

本研究においては, 軽度知的障害児が文意記憶の課題において関係情報と項目特定情報を有効に利用できるか否かについて検証した。実験は3 (被験者群:知的障害児群・健常-読み達成児群・健常-読み遅進児群)×2 (方向づけ課題:項目特定処理・関係処理) ×3 (テーマごとのセットサイズ: 2文・4文・6文) の3要因計画で実施され, 第1の要因と第2の要因は被験者間要因、第3の要因は被験者内要因にされた。再生率に関する結果から, セットサイズの小さな条件では関係情報と項目特定情報の加算的効果が明らかに生じることが確かめられた。また再認率の結果から, いずれの被験者群でも全般的に項目特定情報の符号化量が多かったことが確かめられ, 絵と文を同時提示した本実験の手続が項目特定情報の符号化を促進するのに有効であったことが確かめられた。テーマ再生率の結果は軽度知的障害児の関係処理の困難性を示していたが, 項目特定情報の強調が関係処理の困難性を補ったため, セットサイズの小さな条件で再生率を高める効果が生起したと考えられた。これらのことより, 関係情報と項目特定情報の加算的効果を, 軽度知的障害児の記憶課題の指導に有効に活用してゆける可能性が示唆された。

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© 日本教育心理学会
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