教育心理学研究
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愛着と情動制御
対人様式としての愛着と個別情動に対する意識的態度との関連
坂上 裕子菅沼 真樹
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2001 年 49 巻 2 号 p. 156-166

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抄録

大学生を対象に, 対人様式としての愛着と情動制御との関連を検討した。情動制御の一側面として, 本研究では意識レベルでの情動情報の処理に着目した。まず研究1で,「個別情動に対する意識的態度尺度」を作成した。これは, 代表的な4情動 (怒り, 悲しみ, 恐れ, 喜び) に対して, 個人が意識の上でどのような態度や備えを有しているかを測る尺度であり, 4つの下位尺度 (内省傾向, 自己の情動の覚知, 他者の情動の覚知, 情動に対する不快感) から構成された。次に研究2で, 大学生208名に, 愛着に関する尺度(戸田, 1988)と個別情動に対する意識的態度尺度への回答を求め, 両尺度の関連を検討した。その結果, 両者には弱いながらも関連が認められた。すなわち, 愛着の安定性の高い人は, 自他の悲しみや喜びに対する内省や覚知が高く, 回避性の高い人は, 悲しみや喜びに対する不快感が高い傾向があった。また, 両価性の高い人は, 自他の怒り, 喜びの覚知が低い傾向があった。以上より, 各愛着特性は, 特定の情動に対する意識の上での異なる態度や構えと関連しており, それらの態度や構えが, 各愛着スタイルを維持するように働いているのではないかと考察された。

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© 日本教育心理学会
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