教育心理学研究
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複式学級と普通学級とにおける交友関係の特質および分団学習への効果についで
北野 栄正
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1969 年 5 巻 4 号 p. 25-31,62

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抄録

学級編成による児童の交友関係の特質および学級編成による分団学習への効果を調査した。調査対象として, 普通学校2校, 複式学校2校, それぞれ小学校3年から6年までの児童にSociometric Testを施行し, 各学級内の交友関係を調査した。分団学習は各学級における教室での座席順に構成された5人ずつの分団成員およびSociometric Testによる集団成員の凝集性をもとにした5人ずつの分団成員, 以上2つの分団成員によって分団学習をなし, それぞれ学習所要時間を測定した。以上によって得られた結果を概括すると次のごとくまとめられる。
(1) 各学級共学年の進むにつれて積極的選択が増加しているが, 複式学級よりも普通学級, しかも児童数の多い普通学級程積極的選択が増加している。また, 児童数の多い普通学級程同性積極的選択が多く, 児童数の少い複式学級程異性積極的選択が多い。普通学級においては2人の相互積極的選択が圧倒的に多いが, 児童数の少い複式学級程2人の相互積極的選択のみならず, 3人, 4人の相互積極的選択もかなり見受けられる。
(2) 児童数の多い普通学級程拒否的選択が多い。一般に拒否的選択は低学年児童程多く, 学年の進むにつれて減少する傾向にあるが, 児童数の最も少い複式学級においては学年を通じて余り差異がみられない。同性拒否選択は児童数の多い普通学級程多い。異性拒否選択は普通学級では4年までであるが, 複式学級では全学年にみられる。相互拒否選択は児童数の多い普通学級程多く, 児童数の最も少い複式学級では非常に少い。
(3) 児童数の多い普通学級程無関心の数が多く, しかも同性無関心, 異性無関心共に多い。児童数の最も少い複式学級では4年以上に異性無関心はみられない。相互無関心も児童数の多い普通学級程多い。
(4) 分団学習の所要時間は複式学級よりも普通学級, しかも児童数の多い普通学級程速い。各学級共分団成員の凝集性による分団学習の所要時間が速くなっているが, 児童の座席順による分団成員と凝集性による分団成員との分団学習所要時間のずれは複式学級よりも普通学級, かも児童数の多い普通学級程大きい。
集団成員の凝集性をもとにして分団を構成すれば, 児童数の少い複式学級よりも児童数の多い普通学級の分団成員による協同性が強くなるものと思われる。従って分団成員の凝集性による分団学習への効果は児童数の多い学級程大きく, 児童数の少い複式学級で}ま甑学級程現われないものと思われる。

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