教育心理学研究
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自己嫌悪感と自己形成の関係について
自己嫌悪感場面で喚起される自己変容の志向に注目して
水間 玲子
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2003 年 51 巻 1 号 p. 43-53

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抄録

自己嫌悪感にはその体験から自己形成に向かう可能性があると指摘される。本研究では, 自己嫌悪感を体験する場面において, 否定的な自己の変容を積極的に志向する態度を“変容志向”とし, それと他の変数との関係について検討した。変容志向は日頃の自己内省によって可能となること, 未来イメージが肯定的なことと関連すること, 同時に, それによって自己嫌悪感にとらわれる可能性もあること, また, 日常の自己嫌悪感体験頻度によっても促進されること, を仮説として設けた。質問紙調査を行い, それらについて検討した。調査対象は大学生・大学院生255名 (男子128名, 女子127名) であった。その結果, 自己嫌悪感場面における変容志向は, 普段から自己内省の程度が低い者においては他よりも低いこと, 未来イメージが肯定的である場合にも高くなっていることが明らかにされた。また, 自己嫌悪感体験頻度が高い者において変容志向の程度も高くなっていたが, 変容志向によって自己嫌悪感へのとらわれの程度が高まるわけではないようであった。

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© 日本教育心理学会
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