教育心理学研究
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意識的配慮の共生的学習に関する因果モデルの検討
アジア系留学生の場合
一二三 朋子
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2003 年 51 巻 2 号 p. 175-186

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抄録

本研究の目的は, 接触場面で留学生が行っている意識的配慮の調整を特定すること, そして意識的配慮の調整の学習が, 滞在期間, 日本人の友人関係, エスニシティに関する経験, 日本人との交流意図, 日本語の学習動機, 言語学習に関する信念のそれぞれの要因によりどのような影響を受けるかを因果モデルにより検討することである. 日本の大学で学ぶ372名のアジア系留学生に対して質問紙調査を行い因子分析を行った結果, 4つの意識的配慮が特定された. そのうち3つの配慮は日本人に対するときに活性化されることが明らかになった. また, パス解析の結果, 日本人との友人関係やエスニシティに関する肯定的な経験により交流意図が高められ, その高められた交流意図が非言語的要素の学習を重視する信念を強め, さらに, 意識的配慮の学習を促進するという関連が明らかになった. 逆に, 日本人に対して抑制される意識的配慮は, 友人関係やエスニシティに関する経験の影響を直接受けて変動することが示された. これらの知見から, 日本人側の受け入れ態勢の改善の必要性及びそのための教育の重要性が示唆された.

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© 日本教育心理学会
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