教育心理学研究
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気晴らしの情動調節プロセス
効果的な活用に向けて
及川 恵
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2003 年 51 巻 4 号 p. 443-456

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抄録

気晴らしは, 効果的な情動調節方略とされる一方, 不適応的側面についても指摘されている。本論文は, 気晴らしの適応性に関連する要因を概観し, 効果的に気晴らしを行うために必要な観点を提示することを目的とした。気晴らしの適応性を検討する枠組みは,(a)気晴らしと他の対処方略とを比較する枠組みと,(b)気晴らしそのものをより詳細に検討する視点, すなわち気晴らし対象に着目するものとプロセスに着目するものとに分けられる。本論文では,(b)の視点, とりわけプロセスの視点の重要性について指摘した。気晴らし対象に着目した研究とプロセスに着目した研究の概観を通して, 関連要因を時間の流れにそって位置づけ, 気晴らしの情動調節プロセスをモデル化した。モデルは, 気晴らし状況の文脈を始発とし, 意図, 気晴らし対象選択, 実行中, 結果からなる。効果的な気晴らしのためには, 次の観点が重要であることが示唆された。気晴らし状況の文脈, 気晴らしの意図, 気晴らし対象に伴う報酬と代償・要する注意容量, 実行中の注意状態, 結果の短期的・長期的影響の考慮である。最後に, 今後の気晴らし研究の方向性について展望した。

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© 日本教育心理学会
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