教育心理学研究
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教師に生ずる感情と指導の関係についての研究
中学校教師を対象として
河村 夏代鈴木 啓嗣岩井 圭司
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2004 年 52 巻 1 号 p. 1-11

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抄録

日常的な教育活動の中で, 教師には様々な感情が生じている。教師はふつう, 湧き起こる感情による影響を, 教育活動に生かしたり制御したり経験的に対処している。中学校教員に, 具体的な生徒指導27場面を提示して, その場の不快感と介入の強さ, 併せて「教師特有のビリーフ (河村・國分, 1996a)」の強迫性を調査した。104名の回答によると, 各教師の不快感と介入強度, 27場面での相関値の平均はr=.57 (SD=.24) であった。教師個人内において不快感が強いと介入も強いというかなりの相関が認められた。また, 生徒個人の態度による不快感喚起場面は, 生徒の態度が教師や学校規則に反抗的な「対決場面」と, 軽視するような「軽視場面」の2種類に分けられた。軽視場面に限り, 介入の強さは不快感に有意に依存した。教育実践をする上で, 教師は特に軽視場面において, 自身の感情を意識化することが必要だと示唆された。一方, 不快感はビリーフと介入強度両方によって予測されることが示された。ビリーフや対応行動を検討することが, 不快感の意識化に役立つであろう。

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