教育心理学研究
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未完結な思考の抑制とその影響
木村 晴
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2004 年 52 巻 1 号 p. 44-51

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抄録

通常反意図的な侵入思考である反芻は, 未完結な思考内容の完結を目指す問題解決的な試みの結果として説明されることが多い。しかし, 未完結な思考は, 抑制意図を生じさせることも少なくない。近年の抑制研究では, 抑制意図によってかえって対象思考が増幅する, 抑制の逆説的効果が報告されている。本研究では, 抑制の逆説的効果の観点から反芻思考の検討を行った。未完結事象の抑制の試みは, 完結事象の抑制の試みに比べ, 逆説的効果が生じ思考の侵入が増加すると予測された。54名の参加者は, 未完結ストーリー, または完結ストーリーを読み, その内容を抑制するように, または自由に思考するように教示を与えられた。先行研究の知見と同様に, 抑制教示を与えられた群では, 統制群に比べ, 侵入思考数および主観的思考頻度の増加を示し, 抑制の逆説的効果の予測に整合する反応を示していた。また, その効果は未完結なストーリーを抑制した群において現れる傾向が見られた。さらに, 一週間後の測定においても, 未完結ストーリーを抑制した群のみに思考頻度が高まっている傾向が見られた。このように, 未完結感は抑制の困難性を高めることが示された。未完結事象の抑制意図が反芻思考の原因となる可能性について論じる。

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© 日本教育心理学会
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