教育心理学研究
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日本語学習者の漢字の記憶検索過程
韓国語母語話者と中国語母語話者における検討
伊藤 寛子和田 裕一
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2004 年 52 巻 4 号 p. 359-369

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抄録

漢字能力初級, 中級, 上級の韓国語, 中国語を母語とする日本語学習者 (以下, KLCLとする) に漢字の自由再生を求め, この連想に用いられた手がかりの内容を調べた。その結果, CLでは非漢字圏学習者の場合 (伊藤・和田, 1999a) と同様に漢字レベルの向上とともに意味手がかりの利用が増えるのに対して, KL では, 漢字レベルが向上しても, 意味手がかりの利用割合は変わらないことが明らかになった。このことから, 韓国人学習者の記憶におけるL2の語彙-概念間の結び付きの程度は漢字能力が向上しても変容しないことが考えられる。さらに, KLの形態的連想に用いられた“部品”(部首に準じる部分) の利用割合は, 全ての漢字レベルにおいて非漢字圏学習者 (NKL) の場合 (伊藤・和田, 1999a) と同程度であることが明らかになった。NKLと日本語話者 (J) の部品の割合を比較した伊藤・和田 (1999a) では, NKL よりもJで部品がより多く用いられることが示されている。これらのことから, KLもNKLと同様に漢字の小さな部分に着目して漢字の形態を記憶していることが示唆される。

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