教育心理学研究
Online ISSN : 2186-3075
Print ISSN : 0021-5015
ISSN-L : 0021-5015
中年期の多次元的自己概念における発達的特徴
自己に対する関心と評価の交互作用という観点から
若本 純子無藤 隆
著者情報
ジャーナル フリー

2004 年 52 巻 4 号 p. 382-391

詳細
抄録

本研究は, 30-65歳の中年期男女1006名を対象に, 中年期の多次元的自己概念における発達的特徴について検討した。第1に, 発達的差異の検証によって, 中年期には前期・後期の2つの段階か見出された。中年後期は高自尊感情・低関心・高自己評価という特徴を持ち, 他の時期との間に有意な差を示した。第2に, 自己の諸領域に対する関心と評価の交互作用と自尊感情との関連を検証したところ, 交互作用が有意だったのは男・中年前期における内的自己と社会的自己, 女・中年前期における内的自己, 女・プレ中年期における社会的自己であつた。さらに, 交互作用が有意であつた自己の領域は, 中年期に特有とされる変化の端緒にあり, 内省・葛藤か喚起されやすいものであることが示された。加えて, 中年前期・プレ中年期には, 中年期特有の経験を反映した自己領域に対して, 関心が低い場合に, 自尊感情の不安定性というリスク状況を呈することが示唆された。最後に, 本研究で独自に設定された「関心」という変数の機能と中年期研究に対する意義について議論された。

著者関連情報
© 日本教育心理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top