教育心理学研究
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中が見えない複数の箱を用いた幼児の配分方略
皿への配分方略との比較から
山名 裕子
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2006 年 54 巻 1 号 p. 25-33

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抄録

本論文では, 配分結果が見えない場合の配分行動について, 配分結果が見える場合の実験 (山名, 2005) と比較することにより, 何を手がかりに配分を行うのか, また商が見えないことによる方略選択の変化に関して明らかにした。4歳と6歳の幼児各40名ずつが実験に参加した結果, 4枚のチップを2個の箱に配分するような課題では, 配分結果が見えなくて正しく配分できる参加者が4歳でも8割以上みられた。しかし4歳では配分元のチップの数が増えると正答数が減少する傾向が示されたが, 6歳では正答数の減少はみられなかった。方略分析では, 4歳ではほとんど数巡方略が選択されており, 比較的正答率の高い課題では数巡正方略が, またチップの数が増えるに従って数巡誤方略の選択が増えており, 配分先が見えない箱に配分する場合はより確実に配分できる数巡方略を選択しているように示唆された。また配分結果が見えない場合はユニット方略が選択されにくいことが推測され, 配分する前の見積もりを立てにくいことを意味しているように思われた。配分先が箱の場合は4歳, 6歳でも数巡方略を多く選択しており, 皿に配分するときのような選択方略の違いはみられなかった。

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