教育心理学研究
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例外への懸念がルール学習に及ぼす影響
ルールの適用をいかに促進するか
麻柄 啓一
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2006 年 54 巻 2 号 p. 151-161

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抄録

工藤 (2003) は「花が咲けば種子ができる」という種子植物に関するルールを大学生に教示した後に, 彼らがその教示をどのように解釈しているかを探る質問を行った。その結果, 約50%の者は種子植物に当てはまる一般的な関係が教示されたとは解釈していないことが示された。またそのような者は, いくつかの種子植物に関して種子があるか否かという問題でも多くの間違いを示した。しかし工藤はなぜ彼らが一般的関係を把握できなかったについて説明していない。本研究では, ルールには例外があるかもしれないという学習者の懸念によって, 一般的関係の把握が妨害され, それによってルールの適用が妨げられるという仮説を検討しようとした。約100名の大学生に対して種子植物のルールが教示された。その際, 研究1では工藤と同様にチューリップを事例として用い, 研究2ではアブラナを用いた。いずれの場合も約70%の者が先のルールには例外があると考えていること, また他の事例に対してルールを適用できないことが明らかとなった。例外への懸念に打ち勝ってルールを適用できるようにするために, 研究3では紙面上で「かけ事態」を設定して, ある事例が, 教示されたルールで示される特徴を持つか否かの判断を求めた。その結果かけ事態では, 通常のテスト形式で質問するよりも多くの学習者がルールに基づいて解答した。その後に通常のテスト形式で質問しても, 別の事例に対してルールを適用して解答することができた。

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© 日本教育心理学会
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