教育心理学研究
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ポジティブ・イリュージョンの功罪
小学生のストレス反応と攻撃行動の変化に着目して
外山 美樹
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2006 年 54 巻 3 号 p. 361-370

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抄録

本研究の目的は, 小学4~6年生670名を対象にして, 社会的コンピテンスにおけるポジティブ・イリュージョンが, 8ヵ月後のストレス反応と攻撃行動の変化に及ぼす影響を検討することであった。本研究の結果より, 子ども自身が抱えるストレスの程度によって, ポジティブ・イリュージョンの効用が異なることが実証された。ストレス反応があらかじめ高い児童においては, 社会的コンピテンスのポジティブ・イリュージョンがストレス反応の低減につながることが示された。また, 本研究の結果より, 最初に子どもが備えもつ攻撃行動の水準によって, ポジティブ・イリュージョンの影響が異なることが示された。もともと高い攻撃水準を備えもっていた子どもに対しては, ポジティブ・イリュージョンの有害な影響が認められ, 8ヵ月後, さらに攻撃行動が増加することが明らかになった。

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© 日本教育心理学会
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